第4回

突然の入院。それも当初の予定では6ヶ月〜1年の長期入院。
手術後、病院の都合で個室に移り、洗面所と電話があったのはとっても助かりました。
毎晩決まった時間に電話をかけ、声が聞けた事が片道2時間の距離をうめてくれました。
始めの頃は、主人を病院に残し、帰る時後ろ髪ひかれる思いでした。
何もかも、自由を失ったかのように、元気のかけらもなくなった主人。
これからの先が何もわからず、生きがいのように船で働いていた日々は戻ってこない。
1人、個室で何を考えていたのか、今でも聞いた事はありませんが、
一人の時間が、きっと何かを与えてくれる事を祈りつつ、「またね」と手を振るしかできなかった。
車いすに乗れるようになってからは、喫煙室に行き、いろんな方達と話をしたりで
1日の時間がうまっていたようです。

主人は、下肢不全麻痺です。けど、なぜか杖1本で歩いています。
ベッドの上でリハビリが始まった頃、リハビリの先生に、立って平行棒を行き来するまで
3ヶ月はかかるだろうと言われ私的には、(私も整形に入院経験あり。先天性股関節脱臼
から始まり、17歳の時にシトウ筋短縮と股関節変形の手術を受け3ヶ月入院していた
事があり、リハビリの大変さはわかっていたので)主人に、辛抱してがんばる事が
できるのかなーと、心配していました。ところが、私の心配をよそに、
主人は、あれよあれよと立って平行棒を行き来し歩行器でトコトコ歩き、
ある日ケータイに電話が。「明日来る時、かかとにバンドのついたサンダルを買ってきてくれ」
と。リハビリ用のズックも、車いす用のサンダルもあるのになぁーと思いつつ買って行くと、
車いすに杖がささっていて、あれ?サンダルを履き替え、杖を持ち
ニッと笑いながら、ゆっくりだけど歩いているんです。子供達と驚くやらあきれるやら。
何日も前から杖で歩ける事を入院中のばあちゃんと(ここを見てください。)秘密にしていたんです。
ケガをしてから3ヶ月ほどたった時の事です。
始めて、外泊の許可が出て家へ帰って来た時、生きていれた事、車いすではなく
歩いて帰ってこれた事に二人して涙しました。

そして主人がこう言ったんです。
「リハビリ室に始めていった時、棚の上に並んだ装具を見た時、「あんなのつけるのは嫌だ」
(装具を使用している方々、ごめんなさい。主人は率直にそう思った様で………)
自分で歩く!!!

そう思ったそうです。その思いが、主人に不思議な力をもたらしたようで、
現実そう思っても、なかなかそういうわけにはいかない事の方が多いはずなのに、
あらためて、主人の驚異的回復力に驚かされる次第です。

今でも、両足のしびれ・痛みは、初めから変わらず続いていて、
調子のいい時は、そうでもないようですが、精神的にまいったりすると、
イライラとともに、しびれ・痛みも増す。
足首から先は、氷水につけたように冷たいと時々言っています。

つねっても触っても足首から下は、何もわからないと言っているわりに
床に敷いてるじゅうたんがちくちく痛いと言ったり、
あしのこうを切って血が出ているのに、どこで何をしたかわからない、痛くないと言ったり、
普通の靴下は、しめつけが気になるので、何かいいのはないかと考えたあげく、
私が思いついたのは、『ルーズソックス』。これがいいとルーズソックスを愛用。(これがいいと御愛用中。でも…)

実に摩訶不思議なおっさんです。主人は。